サーキット使用時の当たり付けについて

新品ブレーキローターと新品パッド装着時には、サーキット走行前には特にあたり付けに注意して下さい

新品ブレーキローターをサーキットで初めて使用する際は、急激な発熱をさせるような走行をしますと
ブレーキローターの歪みやクラック、変摩耗の原因になり兼ねません。
レーシングユースブレーキパッドの焼入れ方法と同様、徐々に熱を入れる様ペースを上げていき周回数は
サーキットによりますが大体2~3周程で一旦ピットインして自然冷却して下さい。

その際、ブレーキローター・ブレーキパッドが発熱し始めますと、多少ジャダーが発生します。
温度がある程度まで上がると、ジャダーも消えていきます。

クールダウン(完全に冷めきらなくてもいいです)が終わりましたらアタック走行を行って下さい。

当たり付けが正常な状態

使用材質:CC5-CarbonCompositeMetal
岡山国際サーキット
N1車輌に装着したローターのあたり面です。過酷なブレーキ状況に於いてあたり付けは重要です。

AE86用純正ブレーキローター

使用材質:CC6-CarbonCompositeMetal
富士スピードウェイ
均一に綺麗にあたりが付いてる好例です。高温よりのパッドこそあたり付けは重要となります。

ポルシェ993RS社外ブレーキローター

使用材質:CC1-CarbonCompositeMetal
セントラルサーキット
新品ローターをサーキット走行前に焼き入れして、あたり付け走行直後の皮膜形成完成画像です。

シビックEK9用ブレーキローター(焼き入れ後走行直後)

使用材質:CC6-CarbonCompositeMetal
岡山国際サーキット
新品パッドと新品ローターのあたり付けです。新品同士の組合せは特に焼入れ作業を含めて歪ない様に注意が必要です。

シビックEK9用ブレーキローター

使用材質:SC4-SemiMetal
岡山国際サーキット
新品ローターと新品パッドでサーキット走行後にあたり付け終了したパッドです。

シビックFD2用パッド(あたり付け走行直後)

使用材質:SC4-SemiMetal
岡山国際サーキット
新品ローターと新品パッドであたり付けした直後のローターあたり面です。シビックワンメイク車輌にて走行。

シビックFD2用純正ブレンボローター

使用材質:GT3Limited-CarbonCompositeMetal
セントラルサーキット
IDI熱処理ローターで街乗りから数回サーキット走行したローターディスク面です。

HB21S用IDI熱処理ローター①

使用材質:GT3Limited-CarbonCompositeMetal
岡山国際サーキット
IDI熱処理ローターで数回サーキット走行で酷使し、若干浅めのヒートクラックが発生し始めた状態です。

HB21S用IDI熱処理ローター②

当たり付け・その他が正常ではない状態

パッドとローターの材質がパッド表面に溶け込んでしまった例。
必要な制動力と適正温度が車輌や用途に合わず、
適応範囲オーバーした場合に起こる事があります。

パッドとローターの材質がパッドに溶着した例

CC6にて低温走行し続けた結果、斑状にローターにあたりが付いた画像です。
サーキット走行後は正常に皮膜形成しています。
高温対応出来るパッドを低温で使用し続けますとこの様な状態になる事があります。
ブレーキパッドの対応温度域と使用状況の温度域が、ずれている可能性があります。

斑状にローターにあたっている例

パッド材質が高温に晒されてパッドの摩材成分がローター表面に溶け込んでしまっている状態です。
この様な状態ですと必要な摩擦係数を引出せなくなりパッド本来の性能が100%引出せなくなってしまいます。

パッドの材質がローターに溶着した例(ジャダー発生)

セミメタル材(SC5)にて、装着したばかりでまだローターに皮膜が完全には形成されておらず、
不均一な状態でのローター画像です。
この後、更なる熱入れとあたり付けにより均一に皮膜形成しました。

セミメタルパッドの皮膜形成過程の一例

表面上にヒートクラックが無数に発生し、中までクラックが入った状態のものもあります。
競技用のタッチの硬いメタル系パッドに対してローター硬度が強すぎたりすると高温時に起し易くなります。

(ローター材質はFCD鋳鉄製)
ヒートクラック(ヘアクラック)を起した例①

表面上にヒートクラックが無数に発生しています。
街乗りなどの低温走行とサーキットに於ける高温走行を繰り返し、
高温度よりの競技パッドで使用し続けますと発生する事があります。

ヒートクラック(ヘアクラック)を起した例②

ローター使用限度を超えてサーキットにて使用した結果全周に渡り、
貫通クラックが発生しています。ジャダーを起し、
使用不能になっているので要交換となります。

貫通クラックを起した例

パッド側の制動力が足りなかった状況で、サーキット走行し続けた際にレコード盤摩耗を起こしたローターです。
制動力が足りないため、必要以上にブレーキを踏むため発熱が大きく、ブレーキパッドがオーバーヒートしている可能性が高い状態です。

レコード盤摩耗を起した例

使用温度帯が低すぎる場合の症状。
使用温度域が有効温度域に達していない状態で長時間使用し続けた使用後のパッド表面です。
通常の有効温度域で使用した状況より本来の制動力が発生せず、パッド摩耗も早くなります。

摩材有効温度を低温側で外した例(パッド)

使用温度帯が低すぎる場合の症状。
使用温度域が有効温度域に達していない状態で長時間使用し続けた使用後のローター表面です。
有効温度域外での使用により潤滑材が機能せず、ローターをヤスリのように削れた状態です。

摩材有効温度を低温側で外した例(ローター)

ローター使用限度値を超えてサーキット走行してしまったローター表面です。
ローターディスク摺動面の肉厚が減少し、ベンチレーテッドの支柱部分と空間部分の肉厚差が大きくなり、ミクロン単位で波を打ったようになります。

ローター使用限度値を超えたローター①

ローター使用限度値を超えてサーキット走行してしまったローター表面の全体像です。
ベンチレーテッドの支柱部分と空間部分とでクラックが放射状に入っているのが見て取れます。
摩耗することにより、体積・質量が減り、温まりやすく・冷えやすい特性になってしまい
ローター温度帯が安定せず、被膜もまだらになってしまっています。

ローター使用限度値を超えたローター②